2005年 05月 28日
国立「地球屋」で山口冨士夫を見た 「地球屋」は広い店ではない 小学校の教室を縦半分に切ったくらいの場所をステージとバーカウンターそして客席で分け合っている 昨夜はテーブル席が外されステージ前のスペースはオールスタンディング 開演の1時間前には既に客が溢れかえり 立ったままビールを飲んでいる ざっと見て100人以上_この店でこれだけの人を見るのは初めてだ 客層は様々 思っていたよりも若い人が多くて嬉しい 山口冨士夫は今の若者こそが経験すべき素材だと思うからだ 散々焦らされた後 冨士夫のアコースティック弾き語りからLIVEが始まった ゆるーく...とてもゆるく 自作の曲と共にオーティス・レディングやニール・ヤング等のカバーが歌われていく 良い 真綿で締め付けられていくような不思議な緊張感がある とてもラフな歌い方ながら隙はない 私は後ろから押される形でいつの間にかステージすぐ横に居た これだけ近くで山口冨士夫を見るのは初めてのことだ この存在感は何なんだろう 客席の空気が張りつめていく そしてエレキギターに持ち変え アンプのヒス・ノイズと共にドラマー/チコヒゲとベーシスト/レイが紹介されると場は一気に沸騰 音がうなりRock'n'Rollが始まった 凄い_ バンドはこの瞬間で決まる ここで決まらなければ100年練習しても人の心には届かないだろう 決して大きな音ではない 冨士夫のアンプはマーシャルの30w チコヒゲのドラムセットも極めてシンプルなものだ どちらもPAで増幅していない つまり生音のまま それでもダイレクトに突き刺さってくる 冨士夫の今日のギターは黒のストラトキャスター 黒ずくめの格好に溶け込んで体の一部のように見える 足元のエフェクターはコーラスとワウだけ その色も黒と銀 まるで兵士の足元に転がった薬莢のようだ Rock'n'Roll_ 昔から馴染みの曲が 今に塗り換えられた歌詞で歌われていく きな臭くなり始めた現代への警告 去勢された管理社会への風刺 何よりも そんなものに元々一人であった俺達の「個」が壊されてたまるかといった思い 強い願い 祈りのような歌_ BLUES育ちの山口冨士夫 PUNK育ちのチコヒゲ! FUNK育ちのレイ!!!といった簡潔なメンバー紹介が入る 私は冨士夫が元FRICTIONのチコヒゲと新BANDを組むという話を聞いた時 それは凄い話だが果たして上手く行くものだろうかと思った 二人の音のタイプが水と油のように感じていたからだ でもそれは杞憂だった 縦乗り気味のチコヒゲのビートに乗ることで冨士夫が若返っている そして骨と皮だけのようなラフなアレンジを支えているのがレイのベースラインだ この女の子は本当に上手い 突っ走るバンドが破綻しそうなところをしっかりと繋ぎ止めている FUNK育ちのレイ 曲間のない殆どメドレーのような構成 あっという間に一部が終わった 二部を待つ間に話をした20才の青年は最近BANDを組んだばかりだという 上気した表情で こんなもん観たらもう何も聞けないっすよ、という 名古屋から高速バスで来たという女性は あと何回見れるか分かりませんから、と話す ああ...その通り 若い頃ヒーローと思った男達の幻想が次々と崩れて行く中で 唯一人 山口冨士夫だけが未だに自分を研ぎ澄ませている その間ざっと30年 これをいつまでも見れるものと思ってはいけないのだ ダイナマイツ 村八分 ティアドロップスとバンドが変わっても冨士夫のスタンスは変わらなかった ROCK文化のないこの国でそれをやり通すことがどれだけ困難なことか たやすく想像出来るものではない 冨士夫はストーンズのギミーシェルターにのせて日本語意訳の歌詞で戦争が近づいている不安を歌った 彼のメッセージ色は昔よりも強い 今この国で起こっていることが心配で堪らないのだろう_ 山口冨士夫は 純度100%のPure Poisonだ 毎日聞き流せる類の曲ではない しかし生きていく上で その歌が必要になる瞬間に出くわす その時はいつだってこちらの勇気を支える最良の薬になってくれる筈だ 彼の今度のBANDが息の長いものになることを願わずにはいられない このままずっと いつまでもずっと
by hirokimafuyu
| 2005-05-28 18:25
| LIVE REPORT
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